
生後1歳未満の乳児にはハチミツを与えてはいけないとされています。これは、ハチミツに含まれるボツリヌス菌という細菌が原因でボツリヌス症という危険な病気を引き起こす可能性があるためです。今回は、なぜ乳児にハチミツを食べさせてはいけないのか?について解説します。
ボツリヌス菌を食品と共に摂取してしまった場合、乳児でなければ体内で増殖することはありません。しかし、腸内環境が未熟な乳児では、ボツリヌス菌が体内で増殖し、神経毒素を産生することで、乳児ボツリヌス症を引き起こします。そして、ハチミツにはボツリヌス菌が含まれている場合があります。そのため、生後1歳未満の乳児には、ハチミツを含む食品を与えてはいけません。
ボツリヌス菌は、耐熱性に優れた「芽胞(がほう)」を形成する細菌です。海や川、湖、土壌などに広く分布しています。芽胞は、酸素がない環境下で発芽して増殖し、極めて強力な毒素を産生します。また、芽胞の状態では一般的な細菌と異なり、120℃で4分間以上または100℃で360分以上の加熱をしなければ完全に死滅しません。
乳児ボツリヌス症は、生後1歳未満の乳児がボツリヌス菌に感染することによって引き起こされる病気です。
乳児ボツリヌス症の症状は、次のようなものがあります。
乳児ボツリヌス症には対症療法が行われ、一般的には回復します。日本国内では乳児ボツリヌス症は42症例あり、そのうち死亡例は1つのみです。
ボツリヌス菌由来の疾患は他にも、ボツリヌス食中毒があります。ボツリヌス食中毒は、食品内に混入したボツリヌス菌芽胞が、真空パック等の無酸素状態の食品内で発芽、増殖、毒素を産生し、その毒素を食品とともに摂取することで引き起こされます。1984年の真空パックになった辛子レンコンで起きた事例がよく知られています。ボツリヌス食中毒は大人でもなります。
ボツリヌス症は四類感染症として指定されているため、保健所への全数の届出が義務付けられています。
一般的に、生後1歳を経過すれば、ハチミツを食べても問題ありません。ただし、当たり前ですが食べ過ぎには注意が必要です。ハチミツは砂糖や甘味料と同様に、摂り過ぎるとカロリー過多になり、肥満や糖尿病などの健康問題を引き起こす可能性があります。また、ハチミツには砂糖には含まれない栄養素が含まれているため、過剰に摂取するとビタミンやミネラルの過剰摂取につながる場合もあります。健康的な食事を心がけるためには、ハチミツを含む甘い食品や飲料を適量にとどめ、バランスの良い食生活を心がけることが大切です。
厚生労働省:ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。
厚生労働省:ボツリヌス症
東京都福祉保健局:ボツリヌス菌
消費者庁:ハチミツによる乳児のボツリヌス症
農林水産省:ボツリヌス菌(細菌)[Clostridium botulinum]
国立感染症研究所:ボツリヌス症とは