
「療担規則」を知っていますか?正式には「保険医療機関及び保険医療養担当規則*1」と言い、医療機関や医師などが、保険診療を行う上で守らなければならない基本的なルールを定めています。この規則は今から半世紀以上前の1957年(昭和32年)に厚生労働省(当時は厚生省)から発令されました。
耳慣れない規則かもしれませんが、実はみなさんにとって身近な内容を含んでいます。例えば処方箋の有効期限は4日間という決まりがありますが、この療担規則に定められています(第20条3項)。
療担規則は大きく分けて医療機関が従う規則と医師等の診療方針という二つのテーマについて記載されています。
第1条から第11条までは医療機関が従う規則について定めています。例えば第3条には患者が提出する保険証のことを規定しています。みなさんが普段病院に行った際「月が変わったら保険証を出して下さい」と受付で言われることがあると思います。ですがこれは慣例としてこうしているだけであり、規則としては毎回提出する決まりになっています。
第12条以降は医師等の診療方針について定めており、第12条に診療の一般的方針が、第13条に療養及び指導の基本準則、第14条には指導についてと保険医の診療方針から具体的な診療のルールへと続いていきます。
病院・診療所の窓口で「薬だけ下さい。」と言うことがあるかもしれません、これは法的にどうでしょうか?
療担規則では第20条1項に「診察は、特に患者の職業上及び環境上の特性等を顧慮して行う。」「診察を行う場合は、患者の服薬状況及び薬剤服用歴を確認しなければならない。ただし、緊急やむを得ない場合については、この限りではない。」とあり、同条2項には「投薬は、必要があると認められる場合に行う。」とあります。しかし、診察をせずに処方箋を交付することに関しては療担規則上は定めがありません。一方で医師法第20条には「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方箋を交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。・・・」とあります*2。
「薬だけ下さい。」は医師法に抵触する行為です。処方せんを貰った際は必ず簡単な問診をしているはずで、もちろん診察料も発生しており領収書に記されています。
我が国の医療保険制度を陰で支えている療担規則ですが、その存在を知らない人も多いと思われます。ぜひ一度、この療担規則を読んで、健康保険制度の健全な運営に少しでも関心を持っていただけたら幸いです。
参考文献
*1)https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=332M50000100015
*2)https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000201
