
思わぬ大きな病気やけがをして、多額の出費が見込まれ、不安になることがありませんか?そんなときに助けてくれる高額療養費制度というものがあります。高額医療費制度とは、カンタンに言うと、一定額以上の医療費を負担しなくてもいいという制度です。高額療養費制度は、次回説明する傷病手当金制度とともに、困ったときに本当に助かる制度です。今回は、高額療養費制度について、易しく説明します。
具体的な制度内容は、医療費の支払いが1か月に一定の金額(自己負担限度額)を超えた部分が免除されるものです。この一定の金額は給料(標準報酬月額)によって区分があります。標準報酬月額についてはまた別の回で詳しく説明します。
制度の基本となる70歳未満の所得区分と自己負担限度額の関係は以下の通りです。
252,600円+(医療費ー842,000円)×1%
167,400円+(医療費ー558,000円)×1%
80,100円+(医療費-267,000円)×1%
57,600円
35,400円
ここで1つ知っておいて欲しいのは、高額療養費制度は月ごとに判断されるということです。お金がかかる場合は月をまたがない方が安く済みます。
少し長いですが、例を用いて説明します。例えば、あなたの標準報酬月額が25万円だったとしましょう。上の表を見ると、あなたの自己負担限度額が57,600円だと判ります。つまり、ひと月の内、57,600円を超えた分は医療費を免除されます。そして、あなたは7月20日に病院に行き窓口で80,000円支払ったとしましょう。この場合、高額療養費制度が適用されます。よって、57,600円を超えた分(この場合は22,400円ですね)は後で戻ってきます。さらに、あなたは7月31日にまた病院に行って3,000円を支払ったとしましょう。この場合、すでに高額療養費制度が適用されているので3,000円も後で戻ってきます。しかし、あなたがもし病院にいくのが億劫になってしまい、8月7日に病院に行ったとしましょう。そして、8月はそれ以降医療機関に行かなかったとしましょう。この場合、月をまたぐので高額療養費制度は適用されず、3,000円は戻ってきません。知らないうちにとても損をしていますね。
医療費がさらに安く済む場合があるので、カンタンにご紹介します。同じ世帯で複数人の医療費が高くなった場合(世帯合算と言います)や、高額療養費に該当する月が1年に4回以上となった場合(多数該当と言います)はさらに医療費が安く済みます。その他にも、70歳以上だった場合、70歳以上の場合の世帯合算、長期高額疾病についての負担軽減、高額介護合算療養費など、様々な場合分けや特殊な制度があります。難解な内容になってしまうので、ここでの説明は省略します。
高額療養費制度の利用の仕方には2通りあります。1つ目は窓口で支払って、後で(大体3ヶ月後の場合が多いです)健康保険組合から払い戻される方法です。この方法は特に申請などは必要ありません。2つ目は事前に健保組合宛に、「健康保険適用限度額認定証」の発行を申請して、認定証を取得する方法です。認定証を医療機関に提出して受診すれば、窓口で一時的な立て替えが発生しません。申請しなければいけない点が少々面倒ですが、大きな手術をする際などに、多額のお金を用意しなくて済みます。
以上のように、高額療養費制度は”もしもの時”に助けてくれる心強い制度です。ぜひ覚えておきましょう。
