OPINION田中新聞

【給料の裏側・3】介護保険が危ない!

2021/08/06
田中 克彦

目次

介護保険というサイレントキラー

健康保険制度が危ないという話はよくされますが、実は介護保険制度の方がより多くの危険性をはらんでいます。しかし、そのことが余り世の中で知られていないので、サイレントキラーと言えると私は考えています。

介護保険制度は2000年に誕生した比較的新しい社会保険制度の一つです。40歳から64歳までの会社員が加入を義務づけられており、その保険料は健康保険料と同じく健保組合が徴収しています。ですがこれは、みなさんが住んでいる自治体に代わって徴収しているに過ぎません。健保組合は介護保険の保険者ではないので、その制度の説明や危機的な局面にあることを声を大にして皆さんに訴えている訳ではないのです。

制度当初からの宿命

この制度が始まった20年前から、将来の少子高齢化社会の到来は予測されていました。このため介護保険制度の危機は今に始まった事ではありません。

我が国では古くから高齢者の面倒を見ることは子どもの役割とされていました。時が経つにつれ介護の対象となる高齢者が増え、高齢者を支える子どもが減っていることから、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みを作りました。ですが、少子高齢化は留まることを知りませんでした。介護保険の保険料がこの20年間で約2倍になっている*1ことが、これを証明しています。給付の対象者が増え、負担の対象者が増えていないのです。

現在、介護保険は40歳以上だけが保険料を支払っていますが、制度の危機を救うために適用拡大が検討されています。もし大幅に適用拡大を行うならば、健康保険と同様に全年齢を対象とし、介護保険と健康保険を統合することも考えられるでしょう。

制度の危機を回避するために

制度の危機を回避するヒントとして、長野県松本市の例を挙げたいと思います。松本市の市民の健康への取り組みは本格的なものです。市の説明では、将来、介護保険のお世話にならないための施策を市民がまだ若い頃から実施しているということです。前松本市長(2021/8/6 現在)が医師資格を持つためもあるでしょう。寝たきりにならないような取り組みを行っている点は大いに参考になります。*2

私の住んでいる市でも、介護保険の制度内で様々な取り組みを行っています。65歳以上を対象に、健康料理教室、ウォーキング、フレイル度測定などを実施しています。

みなさん一人一人が将来に渡って健康であり続けるための努力が続けられれば、介護保険のみならず健康保険制度の財政悪化を避けることにつながるでしょう。

参考文献
*1)https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg1/310328/shiryou2-2.pdf
*2)https://www.city.matsumoto.nagano.jp/kenko/kenkojumyo/ken_project/index.html


田中 克彦
株式会社オゾンヘルスケアラボラトリー
株式会社オゾンヘルスケアラボラトリーのシニアコンサルタント。 1954年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部経済学科卒。日本発条㈱に1976年4月~2019年3月在籍し、経理部や人事部、同社健康保険組合常務理事を経験。その才能は多彩であり、多くの資格を持つ(労働安全衛生トレーナー、第一種衛生管理者、心理相談員、ストレスマネジメント検定(マスターコース)、キャリアコンサルタント、健康経営アドバイザー)