そもそも社会保険とは、何か困ったことがあったときにサービスやお金がもらえる仕組みのことです。このサービスやお金のことを保険給付といいます。何も代償を払うことなく、タダで保険給付を受けられれば最高なのですが、そんなオイシイ話はありません。保険給付を受けるためには負担や拠出を払わなければなりません。この負担や拠出のことを保険料といいます。
保険料の決定方法には、定額と定率があります。定額とは文字通り、誰でも同じ金額の負担をすることです。対して定率とは、誰でも同じ負担を納めるのではなく、何かに従って人によって負担額が変わることです。健康保険は定率が採用されていて、カンタンに言うと給料に比例して負担額が変わります。つまり、給料を沢山貰っている方は、少ない方と比べて多く保険料を納めています。
少し詳しいことを言うと、標準報酬月額あるいは標準賞与額に従って保険料が決定されます。みなさんも一度は標準報酬月額という言葉を聞いたことがあるとは思いますが、実は負担額の決定に使われているのです。なお、負担が大きい方が給付金額も大きくなるというわけではないこともポイントです。
余談ですが、所得税には累進税率として、所得の多い人にはより高い税率を課し、所得の再分配を図るという目的があります。対して健康保険にはそのような目的はないので、同じ健康保険制度内では全ての被保険者に同じ保険料率が適用されます。
健康保険の保険料率はそれぞれの健保組合で独自に決定しています。ここで「毎月とか毎週、頻繁に保険料率が変わってたりするってこと?」という疑問を持った方、ご安心ください。保険料率が頻繁に変わることはありません。保険料率は健保組合にとっても被保険者にとっても重要です。保険料率は健保組合の規約に記載し、その変更には組合会での議決を経て、厚労大臣の認可を受けることが必要です。
次に、「それじゃあ、所属している健保組合によって払うお金が全然違うってこと?」という疑問を持った方もご安心ください。保険料率の幅は6~13%と設定されており、必ずこの範囲内に収める必要があります。さらに、健康保険の負担は、みなさん(被保険者)と事業主の双方が行うことになっていますが、その負担割合は原則半々です。なお、事業主側の負担を増やすことは可能です。こちらも規約に明記し、変更は組合会の議決、国の認可が必要です。
皆さんが毎月払っている保険料について、基本的なことを解説しました。選挙においても健康保険の財源や医療費が争点になることが多いですが、健康保険は理解するのが少々難しいです。この記事が皆さんの理解の一助になれば幸いです。