単一健康保険組合の常務理事経験者である田中克彦氏が健康や健保について易しく解説します。
【コラム執筆】
単一健康保険組合
元常務理事 田中 克彦
私たちが毎月の給料(ボーナスの時も)から天引きされている保険料の約半分は私たちに還元されません。残りの半分は国へ上納している納付金です。残念ながら、健康保険料の支払は給料天引きと言う便利なシステムの陰に隠れてこのことは多くは知られていません。その納付金のほとんどが前期高齢者納付金と後期高齢者支援金です。前者は65~74歳の加入者の傷病リスクを調整するために使われていますが、後者は加入者ではない、私たちの先輩である75歳以上の高齢者の医療費負担をしているのです。この納付金の仕組みがなければ、私たちの保険料は約半分の負担で済みます。なぜ、そうしないのでしょうか?これはいつから始まったことなのでしょうか?時を遡って解説します。
我が国はかつて福祉元年と言われた1983年(昭和58年)に老人保健法がスタートしました。70歳以上の高齢者の医療負担は無料となり、その費用は公費(税金)と現役世代である健保組合などの医療保険者が負担することになりました。実は、この時から納付金(拠出金)制度が始まりました。この制度は四半世紀後の2008年(平成20年)まで続き、この間に、国・地方自治体の財政は大幅に悪化し、高齢者の医療費負担を大幅に見直すことが急務となりました。しかし、対象の高齢者の費用負担を重くすることは政治的にもなかなか難しく、見直しの結論は先送りが続いていました。2008年(平成20年)に制度改革がなされたものの、現役世代に大きな負担を負わせる構造は変わらず、しかもそれ以降も毎年、医療費の増大は加速度的に進み、現在に至っています。一方、2000年(平成12年)に別制度である介護保険制度がスタートし、こちらの費用負担も40歳以上の被保険者に重くのしかかっています。
この制度体制は福祉とも搾取とも取れますが、法改正されない限り続くシステムであることは間違いないです。今の若い方に高齢者になったときの話をするのは気が引けますが、原点は私たち一人一人が健康であり、それが将来にわたって継続できることが理想です。そうすれば、私たちの所属する健保組合や国家の財政も健全でいられるのです。近年は、小規模な健保組合、或いは構造上収入と支出のバランスを欠き運営が難しい健保組合が毎年、解散しています。私たちの健保組合が健康で運営が続けられるためには、私たち一人一人が健康で暮らせるようにたゆまぬ努力をすることが求められています。そして高齢者となったときは、現役世代に負担をかけない、心身共に健康な状態であることを目指しましょう!
