
前回は特定健康診査(特定健診)について説明しました。おさらいですが、特定健診の結果は実施したら終わりではなく、特定保健指導の判断材料として用いられます。特定保健指導とは、生活習慣病予備軍の方に対して行う生活習慣改善プログラムです。特定保健指導の実施は、健保組合などの医療保険者に対して義務付けられています。
余談ですが、事業主健診後の保健指導の実施は労働安全衛生法で定められています。こちらは、事業主に対して努力義務が課されています。
特定健診の結果は、その数値によって階層化されます。判断に用いられる項目は、腹囲、BMI、血糖、脂質、血圧、喫煙歴です。階層化され、積極的支援、動機づけ支援、情報提供の3グループに区分されます。このうち情報提供は事実上、特定保健指導の対象外です。積極的支援はサッカーで例えれば、レッドカードです。生活習慣病が目前である悪い健康状態を指します。動機づけ支援はイエローカードです。生活習慣病になるリスクを抱えているということです。
対象者となれば、保健師や管理栄養士などが特定保健指導を担当します。実施義務が生活習慣病のリスクを抱えている本人ではなく、医療保険者にあるとはいえ、世界でも珍しい制度です。健康管理は本来は自己責任であるにもかかわらず、本人の健康を法律で介入するという「余計なお世話」と言えるでしょう。
特定保健指導は、全国民の40歳から74歳が対象の大掛かりな制度です。そのため、必要な医療スタッフ、時間、費用は膨大です。それにもかかわらず、特定保健指導の実施率は2割台に過ぎません。制度が始まった当初から少しずつ上昇しているものの、国全体の効果としては限定的です。
なぜ実施率が低いのでしょうか。特定健診は事業主健診と兼ねることが多いことに対して、特定保健指導は独自の時間を確保する必要があります。そのため、就業時間内に業務との兼ね合いが付きにくいです。また、対象者本人の当事者としての意識が薄く、本人にとっては義務ではないため受けないパターンも考えられます。
将来の社会保障に対する不安が叫ばれる中、まずは、特定保健指導制度の実施効果を着実に上げていくことが求められています。
