健康保険組合に加入している方が出産したとき、分娩費用の補助として出産育児一時金が支給されます。実は、産科医療補償制度に加入していない医療機関等で出産した場合、出産育児一時金が12,000円少なくなります。今回は産科医療補償制度について、解説します。
妊娠や出産は、人生の大きな節目の一つです。出産に伴う医療は、安全に行われることが期待されていますが、時には医療事故や医療ミスが起こることがあります。そんなもしもの時のために用意されているのが、産科医療補償制度です。産科医療補償制度は、以下を目的として設立されました。
産科医療補償制度は比較的新しい制度で、2009年に設立されました。それ以前は、医療事故による被害者が、医療機関や医療従事者に対して損害賠償を請求するしかなく、多くの裁判や訴訟が行われていました。産科医療補償制度の導入により、医療事故の補償がスムーズに行われるようになりました。
2023年4月3日現在、全国に分娩機関(病院、診療所、助産所を含む)は3129あります。その内、産科医療補償制度に加入していないのはたったの3件です。99.9%の分娩機関が産科医療補償制度に加入しています。ほとんどの分娩機関が加入しているとはいえ、自身が利用する分娩機関が加入しているか確認することをお勧めします。加入分娩機関の検索はこちらから行えます。
以下の3つの条件を全て満たす場合、補償対象になります。(2022年1月1日以前に出生したお子様に関しては条件が異なります。)
つまり、脳性麻痺以外の障害や病気、出産者の疾病等は補償外です。
補償金額は一時金として600万円、さらに分割金として毎年120万円が20年間支払われます。つまり、総額で3,000万円補償されます。
掛金について、出産者の負担はありません。出産時に保険者(健康保険組合などのこと)から支給される出産育児一時金等の一部が財源となっています。
本制度を利用するには登録が必要です。制度に加入している分娩機関から登録証が配布されます。登録書を記入し、分娩機関に提出後、保管することとなります。実際の見本をこちらからご覧いただけます。
補償を受けるには、登録とは別に申請が必要です。申請は原則として、満1歳の誕生日から満5歳の誕生日までに行わなければなりません。満5歳の誕生日を過ぎてしまうと申請が出来なくなってしますので注意が必要です。
今回は産科医療補償制度について解説しました。この制度が効果的に運用され、さらに安全な産科医療がされることを願っています。
本制度は本制度をさらに知りたい方は下記の参考文献をご覧ください。
政府広報オンライン お産の「もしも」を支える「産科医療補償制度」
厚生労働省 産科医療補償制度について
公益財団法人日本医療機能評価機構 産科医療補償制度