毎年、定期健診(事業主健診)の時期になると、耳にする「特定健診」あるいは「メタボ健診」とは何でしょうか?
定期健診は労働安全衛生法に規定され、事業主に実施義務が課されています。年に1回以上実施することになります。この健診の目的は職業上疾病を防止することです。少し脱線しますが、かつての日本では粉じんによるじん肺が多く、同時に肺結核が多くありました。そのため、肺のレントゲンを撮影することに重きを置かれているという経緯があります。
一方、特定健診は、別名メタボ健診とも呼ばれ、2008年度から開始された比較的新しい制度です。この健診の目的は40歳以上の人の内臓脂肪による肥満、あるいは生活習慣病の早期発見です。実施義務は医療保険者(健保組合など)にあります。正式には特定健康診査と言います。根拠となる法律は高確法(高齢者の医療の確保に関する法律)です。これは先進国でも珍しいルールです。
特定健診のチェック項目で特筆すべきは腹囲です。腹囲の値が大きいと、胃腸周辺に内臓脂肪が蓄積しているとみなされ、内臓脂肪は健康への悪影響が大きいです。特に40歳を過ぎると、食事や運動の生活習慣から内臓脂肪が付きやすくなります。
特定健診の結果は、特定保健指導(次回詳しく解説します。)の対象とするかどうかを判断基準にされます。判断基準の項目にも腹囲(男性85㎝、女性90㎝)があります。これは関係者の判断がスムーズに行えるための便宜上の基準とは思われますが、制度開始以来、議論が続いています。例えば、アスリートのように素晴らしい筋骨隆々の体を持つ方は、この基準を超えてしまいます。恐らくこの方の体脂肪量は少ないはずなのに・・・。
根拠の異なる2つの法律による健診は毎年2回受けなくても、検査項目が重複しているので、データが共有されれば1回で済みます。しかし、ここで問題があります。定期健診は会社に勤めていれば、ほぼ全員が受診し、40歳以上であれば、そのデータが特定健診結果として活用されます。40歳以上の被扶養者であれば、その方も特定健診の対象となります。もしその被扶養者が会社勤務(パートタイマーなど)をしていない場合は、定期健診の機会がないので、特定健診を別途受診する必要があります。この受診がなかなかされないのが問題となっています。
特定健診の受診率が、被保険者(つまり会社の従業員本人)だけであれば、100%近いのでしょうが、被扶養者と合計すると、50%台にとどまります。これでは、国が目指す生活習慣病の予防には程遠い状況です。
ご覧の皆さんに、40歳以上の被扶養者がいる場合は、その方の将来の生活習慣病予防のために、お住まいの市町村や健保組合指定の医療機関での特定健診の受診を強くお勧めします。
